杜街 diary

仙台・宮城・東北の街歩きと安全・安心に関する雑感

千葉県の停電被害に、東北人が東日本大震災を思い出す

こんにちは。安全第一、杜街です。

台風一過の日本ですが、千葉県で大規模な停電が続いています。被害に遭われている皆さまにお見舞い申し上げます。

この記事を書いている時点での停電状況です。東京電力ホームページより転載)9月11日20時で約39万4100戸が停電しているそうです。

この停電被害のニュースを見ていると、8年半前に私も経験した東日本大震災と同じことが起きていて、あのときの実体験を思い出します。いくつかご紹介していきます。

1. 熱中症との闘い

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10日夕方、台風の影響で停電していた千葉県市原市の住宅で65歳の男性が意識不明の状態で、倒れているのが見つかり、熱中症の疑いで病院に搬送されましたが、その後、死亡しました。NHKより引用)

東日本大震災は早春に発生しましたが、電力不足で全国的に「節電」が呼びかけられ、夏には東北の避難所のみならず関東でも熱中症への警戒が高まりました。

www.asahi.com

東日本大震災の影響で電力不足が懸念される今年の夏。エアコンの使用を控えたり、設定温度を引き上げたりするなど職場や学校、家庭でも節電が求められるが、心配なのが熱中症だ。朝日新聞より引用)

2. だんだんと携帯電話が使えなくなっていく

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東京電力は11日、同日中の県内の停電復旧は難しいと発表した。携帯電話などの通信を支えてきた非常用電源も切れ、市民には不安といらだちが募る。朝日新聞より引用)

携帯電話の基地局は、停電に備えて非常用電源を持っています。ただ、その容量・燃料にも限りがあるので、停電が長引くと非常用電源が切れ、「圏外」エリアが拡大していきます。

東日本大震災の発災1週間後くらいに、私の勤務先に大手携帯電話キャリアから仕事の依頼がありました。「山奥にある基地局を定期的に巡回して非常用発電機の燃料を給油してほしい」というものでした。勤務先は「できることは何でもやろう」と活動していましたので引き受けたのですが、依頼主から提供されたのは基地局の緯度と経度の「数字」だけ。どうやら「地図上のここ」という形で記録してなかったようなのです。こちらは緯度・経度から Google マップで場所の目星をつけ、印刷した地図を社員に渡して向かわせました。半数くらいは基地局にたどり着けたのですが、残りは山奥ということもあり見つけることができませんでした。(某「一軒家」番組の世界ですね。)

3. ガソリンスタンドに長蛇の列

www3.nhk.or.jp

館山市では台風15号の影響で停電が続き、多くのガソリンスタンドが営業を取りやめているなか、発電機や太陽電池などで災害対応が可能な館山市八幡地区のガソリンスタンドでは10日朝、販売を再開しました。NHKより引用)

停電による影響で盲点なのが「ポンプが動かない」ということです。マンションや高台の住宅地では水道が止まりますし、ガソリンスタンドは給油ができなくなります。

この写真は、私が2011年3月23日に撮影しました。はるか彼方にある災害対応可能なガソリンスタンドへ向け、徹夜で並んでいる様子です。

2011/03/23 ガソリンスタンドに徹夜で並ぶ車列@北目町通・仙台市青葉区

4. 吉野家の移動販売が出現

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そんな中、吉野家のキッチンカーが出動し、牛丼を販売しています。「有料なのか?」「無料じゃないの?」など批判的なコメントも寄せられていますが、被災者からは「行動力がすごい!」「神対応!」「神かよ」などのコメントが寄せられています。(ニコニコニュースより引用)

災害時の生活は「非日常」の毎日です。いつもなにげなく楽しめていたものが楽しめない。そのような中で「日常」を取り戻すと、大きな安堵感が得られます。

私にとっては、宮城県気仙沼市で見た吉野家の移動販売が、そのひとつでした。画像は2011年8月19日に気仙沼市で撮影した写真です。

吉野家は移動店舗とプレハブで営業中@気仙沼市

この「吉野家オレンジ」、そして、ふつうに「夏の牛丼祭」までやってくれている!こんな些細なことにも「ありがたい」と感じるものです。

5. 正確な情報は心の拠りどころ

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東電は当初、十日段階で千葉県内では五十万戸超だった停電を、十一日朝までに約十二万戸に減らし、同日中の全面復旧を目指すと説明していた。東京新聞より引用)

今朝のニュースでは「今日中の復旧を目指し・・・」と報道されてましたが、昼になって「早くても2日後以降」に変わっています。これでは市民も対応に困るでしょう。

復旧が1日後なら「自宅でがんばるか」と考えるでしょうし、5日後であれば「東京の親戚の家にやっかいになるか」と考えるかもしれません。正確な情報があれば、市民も自分に合った最善策で対応するはずです。

反対に、正確な情報が無いと、市民は乏しい判断材料の中で決めていかなければなりません。対応が後手になりますし、場合によっては間違った判断をしかねません。

東日本大震災でとても実感したのですが、日本人はまじめで我慢強い民族です。このような災害においては、たとえ不便であっても「みんなが苦労しているんだから自分も我慢しないと」と、支え合い頑張れる民族だと感じました。

ただ、まるっきり先が見えない状況では、不安だけが募り我慢できなくなってしまいます。このような災害においては「正確な情報」と「明確な見通し」がとても重要です。東京電力東日本大震災を経験した企業なのだから、その経験を活かしてほしいです。

 

最後に、早期の完全復旧をお祈りいたします。

 

【追記】2019/09/12

www.chunichi.co.jp

 11日中の全面復旧とした当初の見通しから大幅に遅れたことには「被害想定が甘かった」と釈明した。中日スポーツより引用)

これは「被害規模を正確に把握しないまま見通しを楽観的に発表してしまった」というのが正しい表現だと思います。東北もそうですが、東日本は台風に慣れていないので、「いつもの台風」という思い込みもあったかもしれません。

災害時の情報把握でスピードと正確性を両立することは難しいかもしれません。しかし、今回を教訓に将来への備えをすることが大切だと思います。

this.kiji.is

台風15号による大規模停電で、千葉市熊谷俊人市長は12日、東京電力が当初11日中の全面復旧を目指すとしていたことに「楽観的な見通しを発表するのは被災者のためにならない。できる限り最悪の事態を想定し、全ての関係者が準備できるような情報発信、意識を持ってほしい」と苦言を呈した。共同通信より引用)

まさに、そういうことですよね。

【追記】2019/09/13

www3.nhk.or.jp

東京電力は、午後8時すぎから記者会見を行いました。

この中で現時点での各地域の復旧の見通しを3つの期間に分けて示しました。NHKより引用)

この「復旧見込みマップ」は東日本大震災仙台市の水道・ガスの復旧で登場してました。大規模災害では、できるだけ早く発表してほしい情報です。

 当初の予定から大幅に遅れることについて、担当者は「かなり過小な想定をしてしまった」としています。NHKより引用)

この経験を、必ず次の災害で活かしてほしいです。(本来であれば、東日本大震災の経験を今回発揮すべきところでしたが。)